学生時代の病理学などで学習していた内容をまとめてみました。学生時代、結構病理にハマった時があったので、基本的には好きな分類の勉強です。国試もはやあと3ヶ月後ぐらいにあります。勉強の資料として使用してもらっていただければ幸いです。 今回はウィルソン病です。
ウィルソン病(肝レンズ核変性症)は、常染色体劣性遺伝による希少疾患で、体内の銅代謝異常を原因とします。
この疾患の発症には、肝臓や脳を中心とした多臓器への銅蓄積が関与しており、治療の遅れが患者のQOLに大きな影響を与えるため、早期の診断と適切な治療が非常に重要です。
ウィルソン病のメカニズム
ウィルソン病の原因は、ATP7B遺伝子の変異による銅代謝の障害です。この遺伝子は、銅を胆汁中に排泄する役割を持つ酵素をコードしています。変異によって以下のような問題が起こります。
- 肝臓での銅の排泄障害
銅が胆汁へ排出されず、肝臓内に蓄積します。 - 他臓器へのオーバーフロー
肝臓で蓄積しきれなくなった銅が血液中へ流出し、腎臓、脳(特にレンズ核)、角膜へ蓄積します。 - 中枢神経症状
レンズ核(被殻+淡蒼球)への銅蓄積により、錐体外路症状やジストニーが発生します。
臨床症状
初発症状
ウィルソン病の症状は、神経症状、精神症状、肝症状のいずれかで始まることが多いです。国試レベルではこんぐらいは覚えておくと、答えが導きやすいですので、覚えておきましょう。
- 神経症状
- 振戦(特に羽ばたき振戦)
- 筋強剛
- 嚥下障害や流涎
- 構音障害
- 精神症状
- 性格の変化
- 感情不安定
- 学業成績の低下
- 肝症状
- 黄疸や倦怠感
- 肝硬変
進行した症状
進行したウィルソン病では、以下の症状が特徴的です。実際にウィルソン病の患者を臨床では一名程度しか見てませんが、不随意運動はあった感じですね。目の症状も特徴的です。
- 錐体外路症状(不随意運動、ジストニー)
- 眼症状:Kayser-Fleischer角膜輪(角膜辺縁の銅沈着)
- 腎症状:血尿、Fanconi症候群
- 骨合併症:骨粗鬆症、関節障害
診断方法
重要な検査項目
- 血液検査
- 血清銅値低下(10μmol/L以下)
- 血清セルロプラスミン低値(20mg/dl以下)
- 尿中銅排泄増加(100~1000μg/24時間)
- 画像診断
- CT:両側被殻の低吸収域
- MRI:両側レンズ核でT1低信号、T2高信号
- 眼科所見
- Kayser-Fleischer角膜輪の確認
特に血液検査の値は、重症なのか、軽傷なのか見ておく必要があると思われます。あくまでも診断するのは医師ですので、PTが勝手に診断はしないように・・・
治療法
治療の基本は、「銅の摂取制限」と「体内銅の排泄促進」です。
薬物療法
- D-ペニシラミン
- 銅排泄促進薬。症状が改善すれば維持量で継続。
- 副作用:皮疹、白血球減少、関節炎など。
- 酢酸亜鉛
- 腸管での銅吸収を抑制します。
- ビタミンB6(ピリドキシン)
- 神経損傷予防に使用。
- L-ドーパ
- 振戦など神経症状が重い場合に有効なケースあり。
食事療法
銅の多い食品(貝類、レバー、チョコレートなど)は制限します。
好きなものばかりですので、制限されるのはきついですが、しっかり守ってもらうことが重要です。
隠れて、チョコ食べていた患者もいました・・・
リハビリテーションの役割
理学療法の目的
ウィルソン病患者のリハビリでは、機能維持や生活の質(QOL)の向上を目指します。
リハビリプログラム
- 運動機能改善
- 筋固縮やジストニーの軽減:関節可動域訓練、ストレッチング
- 筋力強化:軽度な抵抗運動
- 歩行・バランス訓練
- 体重移動訓練や平衡反応の促通。
- 転倒リスクの軽減。
- 摂食・嚥下訓練
- 嚥下障害の軽減を図るリハビリテーション。
- 構音障害への介入
- 発語訓練や構音筋のリラクゼーション。
- ADL訓練
- 起居動作や日常生活の動作を支援する訓練。
P T OT STで協力して、自立に向けたリハビリテーションが必要になってきます。しっかり連携をとって、リハビリを遂行することで、早期退院を目指せます。
最新の研究知見
近年の研究では、ウィルソン病の新たな治療ターゲットや診断法が進展しています。
- 遺伝子治療の可能性
ATP7B遺伝子の編集を目指した研究が進んでいます。 - 早期診断の進展
血液バイオマーカーや画像解析技術の向上により、非侵襲的で早期に診断できる可能性が示唆されています。 - 新薬の開発
銅排泄を促進する新薬が臨床試験中であり、副作用軽減が期待されています。
まとめ
ウィルソン病は早期発見と治療が鍵となる疾患です。理学療法士としては、患者の身体機能を維持・向上させるとともに、医療チームの一員として治療をサポートする役割が求められます。最新の知見を活用しながら、患者一人ひとりに適したリハビリプランを提供しましょう。
参考文献・リンク
- Wilson’s Disease: Diagnosis, Treatment, and Research Trends. Journal of Hepatology.
- ATP7B Mutations in Wilson Disease. Neurology Journal.
- ウィルソン病リハビリの実践ガイドライン (日本神経学会)。
ウィルソン病について
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