自分の勉強の一環としてかく、疾患について勉強をしています。勉強した内容を軽くまとめたものを掲載しています。勉強の資料として活用していただければ幸いです。
目次
1 ギランバレー症候群とは?
概要
ギランバレー症候群(GBS)は、自己免疫が原因で末梢神経の脱髄が起こり、急激な筋力低下や麻痺が引き起こされる疾患です。免疫システムが誤って神経を攻撃し、特にミエリン鞘という神経を保護する膜が損傷を受けます。
主な特徴
- 急性発症の運動麻痺:初期症状として、筋力が急速に低下し、歩行困難や起立困難が現れます。
- 深部腱反射の消失:通常、膝や肘の反射が失われ、筋肉が弛緩します。
- 蛋白細胞解離:脳脊髄液中の蛋白濃度が上昇するが、細胞数は正常のままです。
発症の背景
GBSは風邪や胃腸炎、インフルエンザなどのウイルス感染後、特にカンピロバクター感染などがきっかけで発症することが多く、1〜3週間後に症状が現れます。
疫学
- 発症率:年間10万人あたり1〜1.5人の割合で発症します。
- 年齢・性別:全年齢で発症する可能性があり、特に若年成人に多いです。男女比は約3:2で男性に多く見られます。
2. ギランバレー症候群の症状と診断
初期症状
- しびれ感や痛み:手足のしびれやチクチクとした感覚異常が現れることが多いです。
- 筋力低下:通常、下肢から始まり、上肢、顔面へと広がることがあります。
- 顔面神経麻痺:約50%の患者に顔面の筋肉の麻痺が見られます。
- 自律神経症状:血圧の変動、心拍数の異常、発汗異常などが発生します。
診断方法
- 脳脊髄液検査:蛋白細胞解離が特徴で、脳脊髄液中の蛋白濃度が発症後1〜2週間で増加します。
- 電気生理学的検査:神経伝導速度の低下や伝導ブロックが確認されます。これにより脱髄の程度を評価します。
3. 最新の治療とリハビリ方法
治療法
- 免疫グロブリン療法(IVIg):自己免疫反応を抑制するために、抗体製剤を静脈から投与します。
- 血漿交換療法(PE):血液中の有害な抗体を除去し、症状の進行を抑える治療法です。
リハビリの重要性
GBSのリハビリは、発症後早期から開始することが重要です。急性期から回復期、さらに維持期にかけて段階的に行われ、患者の機能回復とQOL(生活の質)向上を目指します。
急性期のリハビリ(発症〜2ヶ月)
- 体位交換:
- 目的:床ずれや拘縮の予防。
- 方法:2時間ごとに体位を変えることで、皮膚の圧力を軽減します。
- 呼吸リハビリ:
- 目的:呼吸筋の強化。
- 方法:深呼吸や腹式呼吸、呼吸筋ストレッチを行います。
- 関節可動域訓練:
- 方法:関節の硬直を防ぐため、他動運動を行います。特に足首、膝、肘の可動性を意識します。
回復期のリハビリ(2〜6ヶ月)
- 筋力増強訓練:
- 方法:軽い負荷の筋トレを徐々に取り入れます。例えば、ゴムバンドを使った腕や脚の運動を行います。
- 注意点:疲労を避け、無理のない範囲で実施することが大切です。
- 歩行訓練:
- 方法:平行棒を使用した歩行練習から始め、徐々に杖や歩行器に移行します。
- バランストレーニング:
- 方法:片足立ちやスクワットなど、バランス感覚を鍛える運動を行います。
維持期のリハビリ(6ヶ月以降)
- 体力維持訓練:
- 方法:ウォーキング、軽いランニング、サイクリングなど、有酸素運動を中心に行います。
- 応用動作訓練:
- 方法:日常生活の動作(階段の昇り降り、買い物など)をシミュレーションし、実生活での適応力を高めます。
4. 自宅でできるリハビリ運動
1. 足の指のグーパー運動
- 方法:足の指を開いたり閉じたりします。これにより足の筋肉を活性化し、血行を促進します。
- 回数:10回を1セット、1日3セット行います。
2. 椅子スクワット
- 方法:椅子に浅く腰掛け、ゆっくりと立ち上がり、また座ります。膝や腰に負担が少なく、筋力を安全に鍛えることができます。
- 回数:10回を1セット、1日2〜3セット。
3. 呼吸法
- 方法:鼻からゆっくり息を吸い、口から息を吐きます。リラックスした状態で行い、呼吸筋を鍛えます。
- 時間:1回5分程度、1日3回行います。
4. 手指運動
- 方法:手のグリップを握る動作を繰り返します。これにより、握力を強化し、手指の筋力を向上させます。
- 回数:10回を1セット、1日3セット。
5. ギランバレー症候群の予後と注意点
予後
GBSは一般に予後が良好で、多くの患者は半年から1年で回復します。しかし、重症例では恒久的な障害が残ることもあり、回復までの過程は個々の症例によって異なります。
注意点
- 過度な運動の回避:過負荷の運動は、神経の再生を妨げる可能性があります。無理のない範囲で少しずつ運動を進めることが重要です。
- 自律神経症状の管理:血圧の変動や不整脈が現れる場合は、医師の指導のもとで適切な対応が必要です。
まとめ
ギランバレー症候群は、適切な治療とリハビリによって多くの患者が回復することができます。最新のリハビリ技術と日常的な自宅での運動を組み合わせることで、より良い回復を目指しましょう。発症からの早期リハビリ開始が重要であり、医療専門家と連携しながら計画を進めることが望まれます。
参考文献
- 標準理学療法学・作業療法学 神経内
ギラン・バレー症候群 | みんなの医療ガイド | 兵庫医科大学病院
兵庫医科大学病院は、1972年に兵庫医科大学医学部の附属病院として兵庫県西宮市に開設し、高度で先進的な医療を提供すべく、優れた医療人の育成や医学研究の推進に取り組ん…
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